水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

【まどかマギカ】ほむら改変後世界の魔法少女システム

各世界の魔法少女システムについての軽い考察

映画まどマギネタバレです。

 

 ほむらによる世界改変によりそれまで世界と大きく変わった点は、QBの立ち位置であろう。

まどか改変前の世界(ここではオリジナル世界とする)はもちろん、まどか改変後の世界においてもQB文明は一貫して人間の感情からエネルギーを搾取する存在であった。

オリジナル世界において、QB文明は少女を魔法少女にさせ、更に魔女との戦いのなかで絶望を溜め込ませ、希望と絶望の相転移を生じさせることにより莫大なエネルギーを手に入れていた。エネルギーを発散させた後の魔法少女は魔女となり、再びエネルギー発生システムのなかに組み込まれていく。

まどか改変後の世界においては、どのようなエネルギー回収システムを構築したか不明であるが、QB側と魔法少女側は一定の友好関係に立っているらしい。おそらく、一般的な絶望により自然発生したエネルギーを、魔獣狩りという形で魔法少女が回収し、QBに渡しているのだろう。この世界でも、やはり魔法を使うことにより魔法少女のソウルジェムは濁っていく。だが、完全に濁りきり、希望と絶望の相転移が起こる前に、円環の理により消滅する。この世界でも、魔法少女はQBが作り出したシステムの歯車のひとつである。たしかに魔法少女のプライドは保てるかもしれないが、魔法少女の自己犠牲が強いられるという点ではオリジナル世界と同一なのだ。魔法少女たちがシステムを内面化しているという点において、オリジナル世界よりたちが悪いかもしれない。

ところが、ほむら改変後の世界では、QB文明の立ち位置は一変する。QB文明はコントロールするものではなく、ほむらによりコントロールされるものとなる。では、この世界での魔法少女システムはどうなっているのか。ここで一つの仮説を出したい。ほむら世界ではソウルジェムの浄化は、QB文明自体がやっているのではないか(その根拠として、映画ラストではボロボロになっていたQBの眼が濁っていた)。いままで、魔法少女が魔女になることによりエネルギーが発散していた、それでは逆にエネルギーを消費することにより魔法少女が魔女になることを止める(ソウルジェムを浄化する)ことも可能なのではないだろうか?

いままで、一貫して魔法少女からエネルギーを搾取する存在であったQB文明は、悪魔となったほむらの力により魔法少女にエネルギーを供給する存在に移り変わった。ほむら改変後の世界において、魔法少女は魔女化や消滅から守られる。これは、限りなく映画前半のほむら結界内の理想世界に近い世界だ。

そう考えると、映画『叛逆の物語』はかなりのハッピーエンドで幕を閉じたのではなかろうか。