水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

【まどかマギカ】映画『叛逆の物語』見終わってからひらめいた三つの説

映画『魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』の視聴三回を記念して、映画内では謎のまま残った事象に関する三つの説を書きました。ネタバレです。

 

 

 

・円環の理に導かれた者は個がなくなり、集合精神体として取り込まれる。

これは、おそらく正しいだろう。根拠はさやかの描写から来る。さやかは、TVシリーズと比べ物にならないほどの落ち着きぶりを見せる、恭介を『無神経』と呼ぶことや、ほむらを諭すことなど、やることなすこと全てがTVシリーズの彼女からは考えられないほど乖離している。外の世界の記憶がない演技をしながら一ヶ月を過ごすという無理難題をいとも簡単にこなすという人間離れしたことをやってしまうのも、もはや彼女が元の美樹さやかではない証拠だ。そもそも、さやかは魔法少女となることに恐怖および嫌悪感を感じていた(魂を身体からソウルジェムに移すことを、自身がゾンビになってしまったと感じ、苦悩していた)。その彼女があれほど屈託なく魔法少女をやれるのだろうか。

また、より直接的な証拠として、さやかにはまどかや魔女の記憶があることが挙げられる。まどか改変後の世界には、両者はいないはずだ。それをさやかが記憶しているということは、円環の理に導かれたとき、複数の平行宇宙にまたがって魂が融合したということであろう。

ほむらはさやかに「人間としての生を受けたことを喜びなさい」と言っている。これは裏を返せば円環の理に導かれれば、(個人としての)人間ではいられなくなるということだ。

 

・ほむら改変後の世界では、魔法少女とQBの立場は逆転し、QBは魔法少女にエネルギーを供給し、ソウルジェムを浄化する存在となっている。

 

この説は、やや確実といったところだろう。数字にすると70%ほどの自信はある。

直接的な証拠として、エンディング後に出てきたボロボロになったQBの眼がソウルジェムの濁りと同じような色をしていたことが挙げられる。

また、間接的な証拠として、QBはソウルジェム浄化技術を有している(ほむらが結界内で魔女化するとき「浄化が追いつかないよ」と発言している)ということが挙げられる。

 

・ほむら改変後世界において、QBのエントロピー減少計画が破綻したため、宇宙の滅亡が近づいている。

 

これは妄想に近い説である、そのため自信はあまりないが、このように考えると違和感をなくせることは確かだ。

最後のほむらとさやかの会話で、さやかは「まさか宇宙を破壊する気?」と聞き、ほむらは「全ての魔獣を倒せればそれもいいかも」と答える。この説はその会話に対する解釈だ。

もしも、上に書いたように、QBが魔法少女にエネルギーを供給する立場になっているとすれば、本来のQBの目的である宇宙全体のエントロピー減少は挫折するばかりか、逆に魔法少女に渡す余計なエネルギーを作らなければならないので、かなりの速度でエントロピー増大が起こる。さやかの「宇宙を壊す気?」とはQB計画の破綻により宇宙の熱的死が非常に早く到来するということを表しているのではないか。

おそらく、ほむら改変後世界のQBは魔獣を狩ることにより、わずかながらのエネルギーを得ているのだと考えられる。その魔獣が全て倒されれば、QB文明の計画、しいてはQB文明自体が崩壊し、宇宙の死滅が早まる。ほむらとさやかの会話はそのようなことを表しているのではないか。

(もっとも、「宇宙を破壊する気?」というのはほむらが悪魔になったというただの比喩的な表現だということも考えられるが)