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草野原々公式ブログ

SF作家 草野原々のブログ

"DOOMSDAY, BISHOP USSER AND SIMULATION WORLDS"まとめ(4)

Alasdair M. Richmondの"DOOMSDAY, BISHOP USSER AND SIMULATION WORLDS"まとめ第四回です。 論文は https://www.era.lib.ed.ac.uk/handle/1842/2111 で読めます。

 

 (4)誕生順ナンバーなしの終末?(Doomsday Without Birth-Rank?)

 

UCについての議論が十分でなかったとしても、終末論法のある一派を脅かすことはできる。

終末論法は次の二つの確率論ルールに絡めて論じられる。

一つは、Self-Sampling Assumption(SSA)で『ある観測者を、準拠集団のなかのすべての観察者からランダムにピックアップしたものとして扱え』というものだ。

もう一つは、Self-Indication Assumption(SIA)で『あなたが存在するということは、観察者がたくさんいるという証拠である』というものだ。SIAは終末論法に反対する論者によって使われる。たとえSSAによって、終末が近くにやってくると推論されたとしても、SIAにより、歴史上の人類総人口が多ければ多いほど確からしいので、未来の人口も多いこととなる。SSAとSIAは相殺するというわけだ。

 

 しかし、ニック・ボストロムはSIA単独ではおかしな結論になると論じている。それが『おせっかいな哲学者(Presumptuous Philosophy)』と呼ばれる思考実験だ。

未来世界において、物理学者の研究の結果、AとBどちらかの説が万物理論の候補に挙がった。A説のほうは宇宙にいる観察者は二千億人にいるとし、B説のほうは二百兆人いるとする。どちらが正しいか物理学者が悩んでいると、哲学者がやってきてこういう

「SIAによれば、あなたが存在しているという証拠からAよりBのほうが確からしいことがわかるじゃん」

これは反直感的なのではないかとボストロムは言う。

 

Monton(2003)は終末論法が誕生順ナンバーを必要としてないことを示し、SIAを擁護した。彼は終末論法を次のように変える。

二つの説、H1とH2があり、前者は二千億人、校舎は二百兆人の観察者がいるとする。事前確率を、0.05と0.95とする。

命題Rを「わたしの誕生順ナンバーは六百億です」とする。SSAによると

P(R|H1)= 1/2千億 P(R|H2)=1/200兆 

ベイズ更新により、P(H)=0.05 が P(H1 | R)=0.98 へと増す。

しかしながら、SIAによりH2はH1より千倍起こりやすいことになるため、オリジナルの確率に戻る。

 

Montonは、更に誕生順ナンバーを命題kに変更する。kとは例えば以下のようなものだ。『2002年、四月九日に、GMT20時41分から42分の間、ケンタッキー州レキシコンの323メインストリートで一人でじっとしている』。命題Kを誰かがkに当てはまるというものとする。このとき、P(K)は仮説が説く人口サイズに関わらないため、H1,H2両者の説と独立している。

さて、あなたがkに当てはまっている状況(Kが真である状況)を考えよう。命題Mを『あなたが命題kに当てはまる』とすると、SSAを使いP ( M | H1 )はP ( M | H2 )より千倍確からしいということとなる(なぜならば、自分はランダムにピックアップされるので、偶然kに当てはまった人になる確率は人口の少ないH1のほうが多くなる)

Montonは誕生順ナンバーなどなくても、終末論法が導かれてしまうということ、そして、そのようなことがある以上SIAでなくSSAも信じがたい結論を出してしまうということを主張している。

 

ところが、Darren BradleyはMontonの終末論法には誕生順ナンバーが含まれていると指摘する。たとえばkを『アメリカ独立500周年記念日に存在する』とすると、H2の確からしさが上がる。Kを知ったとき、それは誕生順ナンバーを推論することができる証拠となってしまうのだ。

 UCの結論は終末論法が誕生ナンバー情報を必要としており、SIAはSSAよりも尤もらしくないとするBradleyを支持する。たとえMontonがBradleyに反論し、kは誕生ナンバーと独立な性質だと言ったとしても、Montonの終末論法と対応したUCを作ることができるからだ。つまり、Mはもし過去の人口が少なければ高い尤度を持つ。H1とH2という仮説があったとする、両者は現在の人口は同じだが、H1のほうが過去の人口が少ない。このときP(M|H1)>P(M|H2)である。Monton流終末論法のリスクは誕生ナンバーを引き合いに出すことができないため、過去と未来を対称的に扱わなくてはならないことだ。経験的証拠を使ってH1とH2を区別すると、誕生順ナンバーに関しての情報が入ってしまう。(更に性質kが生者・死者関係なく与えられるとするとSIAとMontonの論法はSolarian Corollaryを支持してしまう)。UCに対抗する主な反対論は終末論法は誕生順ナンバーを必要とするということだ。誕生順ナンバーについての経験的証拠がなければ、終末論法は他の反直感的な論法と同じになってしまう。Montonの終末論法は誕生順ナンバーを導入するかUCに屈するかのジレンマに直面する。