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【論文まとめ】法則の様相的地位:ハイブリット見解の擁護 セクション1/The Modal Status of Laws: In Defence of a Hybirid View【Tuomas E. Tahko(2015】

法則は偶然的なのでしょうか、それとも必然的なのでしょうか?

この論文の著者は、ある法則は必然的であり、別の法則は偶然的だとしています。

このエントリでは、セクション1の先行研究の紹介と、著者の主張のみです。セクション2からはのちに新しいエントリを投稿します。

 

philpapers.org

 

 

 

法則の様相的状態については三つの主な立場がある。

ヒューム的スーパーヴィーニエンス(Lewisが提唱):法則は完全に偶然的であり、単なる規則性であり、事実にスーパーヴィーン(付随)しているだけだ。
法則的必然性アプローチ(Armstrongが提唱):法則は形而上学的に必然ではないが、単なる規則性とは区別できる。偶然性のスペクトラムを導入する。『ソフトな』種類の法則的様相を前提とする。
科学的/傾向的本質主義アプローチ(Ellis, Birdが提唱):法則は形而上学的に必然的であり、物の本質的性質に関係している。『ハードな』種類の法則的様相を前提とする。

他には、Mumfordの法則なし性アプローチ、Loweの本質主義者アプローチ、Maudlinの法則についての原初主義などがある。
いずれにしても、様相的力(Modal Force)をどう扱うかで立場が変わってくる。
様相的力についての問い:単なる規則性から本当の法則を区別するような見かけ上の様相的力を説明することはできるか?
哲学者たちは、様相的力の説明をどの程度したら十分なのかは一致していない。しかし、この論文では、それぞれ一致していなくても良いとする。なぜならば、様々な種類の法則があるからでる。

法則的必然性アプローチとヒューム主義は、両者とも、『ハードな』種類の様相的力を拒否するという点において同じ側にいる。以下で両者の類似性について見ていこう。
ヒューム主義においては、性質についての見解は『定言主義/カテゴリカリズム/categoricalism』あるいは『カテゴリカル一元論/定言的一元論』と呼ばれているもので、「すべての根源的性質は傾向的ではなく、カテゴリカルだ」というものだ。根源的性質とは、本質的な因果力やいかなる本質的性質も持たない。つまり、性質には内在する様相が欠けているのだ。
カテゴリカルな立場においては、法則はカテゴリカル性質に関しての偶然的規則性である。
ヒューム主義と法則的必然性アプローチは両者ともカテゴリカルな立場である。科学的/傾向的本質主義アプローチはこの二つと対立する。著者は、後者のほうを自らのスタート地点とする。

著者のアイディアとは、ある法則は偶然的であり、ある法則は形而上学的に必然的であるとする「混合的立場」である。これをハイブリット見解と呼ぼう。
先行研究で著者に最も近いのはHendry and Rowbottom(2009)である。彼らの見解はある種の(温和な)傾向的本質主義である。それは反quidditismを特徴とする。quidditismとは、性質の同一性は原初的であり、同一性を失うことなく質量や電荷など傾向的特徴を交換することが可能であるという立場だ。同一性を保証する「このもの性haecceity」は傾向的特徴にかかわりなくあるとする。
Hendry and Rowbottomは、「このもの性」の代わりに、同一性の基準に「曖昧な傾向的プロフィール」を使う。塩が水に入ると溶けるという傾向性は、様々な条件が必要になるが、その条件は曖昧である。それらの条件を総合して「曖昧な傾向的プロフィール」とする。しかし、個別の傾向性自身を使わずに、特定できないプロフィールを使うのはquidditismになる恐れがある。

著者はHendry and Rowbottomに完全に賛成しているわけではないが、重要なつながりがある。Hendry and Rowbottomの説を「温和な」タイプの傾向的本質主義、Ellisの説を「厳格な」タイプとすれば、著者は「弱い」タイプの傾向的本質主義である。
「温和」タイプは、性質の同一性は傾向的プロフィールもしくは因果的役割で決定されるとするが、性質の傾向的プロフィールのなかで「穏健な」間世界的変動を認める。
「温和」タイプと「弱い」タイプの重要な違いは、前者が傾向的プロフィールの変動を取るに足らないものとして説明なく放っておくのに対して、後者が変動を起こすものについて説明を試みることだ。

著者の立場は、自然種についての根源主義だ(本当の自然種と根源的存在論的カテゴリーを前提とする)。これはLoweやEllisもとっている立場だ。しかし、著者のバージョンには相違点がある。主な違いは以下の二つである。
①:ある法則は偶然的で、別の法則は必然的である。
②:根源的自然種の特徴についての法則は必然的であり、非根源的自然種の特徴についての法則は偶然的である。

セクション2では、①が擁護される理由を示す。セクション3では、Loweの本質主義的アプローチへの批判と、法則と自然種のつながりが示され、Loweの説明の問題点から②が導き出されることを確認する。セクション4と5では、光物理学での法則には偶然的なものと必然的なものが混在していることを示す。