水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

メモ 知識の内在主義と外在主義

(注:さりげなくまどマギネタバレしてます)

 

ある信念を『知識』とするためには以下の三条件が必要だ。

①その信念が真であることに本人が確信していること

②その信念が実際に真であること

③その信念が真だというと本人が確信するのは当然であるということ(正当化)

 

このうち、③の条件をどう説明するかにより内在主義と外在主義が分かれる。

正当化が心のなかのみで行われるとするのが内在主義、世界と心の結び目で行われるとするのが外在主義である。

 

内在主義は基礎付け主義と整合主義に分かれる。

 

基礎付け主義はある基礎的な信念が、一般的な信念を正当化するというものである。

このとき、そんな都合の良い基礎的信念なんてあるのか? ということが問題となる。

 

整合主義はすべての信念は他の信念との整合性により正当化されるというものだ。ある信念がその人のすべての背景信念体系と整合性があればその信念は正当化される。

 

外在主義は、信頼性の高い信念形成プロセスが生み出した信念は正当化されるというものだ(信頼性が高いとはこれまで生み出した信念が真であることが多かったということ)。ここでいう信念形成プロセスとは、外界の事象を心のなかの信念にするパイプラインのようなものである。

しかし、外在主義には欠陥がある。もし、信頼できるプロセスから生まれた信念であっても、その信念を信頼すべきではないという決定的証拠が突きつけられるかもしれないのだ。例えば、映画「劇場版まどか☆マギカ 新編:叛逆の物語」の前半では、ほむらは自身がナイトメアと楽しく戦っているという信頼できるプロセスによって生まれた信念を持っていた。しかし、それは決定的証拠(バスが町の外に出ないなど)により疑わしいものとなる。外在主義がこのままでは、『ナイトメアと戦っている』という信念は正当化されたものとなってしまう。

そのため、『信頼できるプロセス』であることを証明するため、次の二条件をつけたす(ゴールドマンの条件)

①信念を生み出すプロセスが信頼できないものだと、本人が信じていないこと。

②信念を生み出すプロセスが信頼できないものだという結論(本人の心的状態)を、信頼できるプロセスにより生み出せること。

 

外在主義には別の問題もある。ある信念を正当化させるプロセスというものをどこまで広く取るかという問題だ(信頼性の範囲問題)。

考えるのは、現実世界のみでよいのか。現実世界だけ考えて、そこで真な信念を生み出しやすいプロセスを正当化プロセスと断定するか。それとも、可能世界までもを考えるのか。後者の場合、例えばほむらの結界世界のような可能世界を考えると、現実世界で広く用いられている信念形成プロセスは信頼に値しないということになってしまう。

そのために、「通常世界の信頼主義」という案が出されている。これは、現実世界においての一般的信念が保持される可能世界(通常世界)までを考え、その世界に対応できるような信念形成プロセスを信頼できるプロセスとしようという考えだ。