水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

【メモ】『コングレス未来学会議』アリ・フォルマン監督×山村浩二さん対談

TOHOシネマ日本橋で行われている東京アニメアワード2015

そこで先行上映された「コングレス未来学会議」に行って来ました。

上映終了後、監督のアリ・フォルマンさんとアニメーション作家の山村浩二さんの対談がありましたので、そのときの様子をメモしたものを載せます。

 

 

レムの原作はコミュニズムによる独裁を風刺したものだが、この映画ではそれに代わってドラッグによる独裁がテーマとなっている。

ストーリーのきっかけ:カンヌ映画祭で70年代のビッグスターに会ったのに分からなかった。ロビンがコングレスで歩くとき誰も気づかないこととかぶっている。ハリウッド世界で歳を取っていく女優を主人公にしようと思った。

どのようなスタートになったのか?:脚本を書くのは早いほうだが、『コングレス』は八ヶ月毎日苦しみぬいた末に書かれた。アニメーション世界でのルール設定の構築に時間がかかった(ピルを飲むことによる変化は誰が観察できるかなど)

はじめはケイト・ブランシェットを主演にしようと予定していたが、ロビン・ライトに出会い、美しく、もの悲しく、壊れやすそうな印象を受けてこの人だと思った。

撮影の様子:実写パートは最も簡単だった。一方、アニメーション製作は困難であった。ヨーロッパの映画作りの方法は支援された国や市にお金を落とさなければならないため九カ国で製作した。たくさんのスタジオで作ったためテクニックに差異がある。また、国ごとにキャラクターの印象も異なった。ディランはイスラエルやドイツではタフな感じになり、ベルギールクセンブルクでは女性的な感じになった。キャラクターのばらつきは8ヶ月かけて治した。一つのショットで四つの大陸を渡った末、完成品を見てもう一度やり直したこともあった。
CGは一つも使っていなくすべて手書きである。ロトスコープも使っていない。役者が実写で演技をして、アニメーターが役者の雰囲気を掴み紙の上で書く。役者はアニメーター以外誰も見ないアクションをしたのだが、皆喜んで行った。実写映像を参考にアニメーターがデザインをしている。アニメーターに「君はロトスコープをやったんだ」と言わないでくれ、そんなこと言ったら自殺してしまう。

デザインの構築:アニメの未来は分からないので過去を参考にした。参考にしたのはフライシャー兄弟ラルフ・バクシ、日本の70年代実写映画、今敏の『パプリカ』など。『パプリカ』はサイケデリックなシーンに影響を受けている。

『何が現実か?』というテーマに興味があるのか?:我々は誰もが幻想と現実という二つのパラレルワールドに生きている。良い映画はその二つを合体させる。映画館では二つの世界が交差する。デイヴィッド・リンチの良い映画はリアリティとファンタジーを合体させている。矛盾したことを一つにするのが私の映画の使命だ。『コングレス』は幻覚と現実の両方を刺激する。

パラマウントナガサキという会社名やボブズの着物など日本要素があるのは?:私は東京に来るのが三度目で日本のファン。会社名は娯楽産業と薬品産業のミックスということから。ボブズはジョブズのパロディ。アメリカの大会社は世界を食い物にしている一方でニューエイジを演出している。中国の労働者を搾取してiPodを作らせている一方で寄付をしている。着物はその皮肉のために描いた。

何か一言:映画を見て面白かったら友達に伝えてほしい、なぜならば日本で成功してほしいからだ。日本はSFファンが多いし、変わった人たちがたくさんいるのでこの映画も成功するのではないか? また、今現在、アンネ・フランクの日記アニメ化を企画している。

(山村さん)最初どこも日本配給に手を上げなかったのはビックリ。TAAFを機会に日本とのプロダクションを実現できたら嬉しい。