水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

論文日記(2):『リンゴが赤い』ってどういうこと?/普遍者とトロープ

Stanford Encyclopedia of Philosophyの"Properties"1-1節より

Properties (Stanford Encyclopedia of Philosophy)

 

二つの赤いリンゴaとbがあったとしよう。
これは何を意味しているのか? 
普遍者説によれば、これは次のことを意味している。
①aは赤い、bは赤いという二つの事態の状態がある。
②前者はaと普遍者「赤」を構成要素として含む。
③同じように後者も普遍者「赤」を含む。

対抗するところの、トロープ説においては
事態の状態などない
aの赤性とbの赤性という存在のみがある(二つは別のトロープである)

トロープは単一の存在であり、事態の状態は複合的な存在である。

普遍者には具体的対象を特徴付ける『characterizer』と別々の具体的対象を同じ普遍者としてシェアさせる『unifier』という二つの側面を持っている。普遍者説によれば別々の対象において客観的類似性が存在する。
一方、トロープにはcharacterizerとしての側面しかない。特定のひとつの対象しか特徴付けられないからだ。そのため、トロープ説は具体的対象の類似性について追加の説明をしなければならない。その説明はトロープには客観的類似性があり、類似性集合がunifierの役目を果たすというものであろう。
トロープ主義者は『性質』という語をトロープによる特徴化と、類似性集合による統一化へと分けるだろう。

普遍者説とトロープ説は非常に根源的な存在論的対立であり、心的因果や還元的物理主義などの哲学領域で問題となってくる。