水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

【メモ】分析哲学メモ

●言語論的転換:言語の機構の解明により他の機構を説明しようという方針の転換

人工言語派:日常言語では哲学の諸問題は解決できないので論理学に基づいた言語を作ろう

●日常言語派:日常言語を丁寧に分析していけば哲学的問題に答えられる

●意味のイメージ説:言葉の意味の同一性は言葉に結び付けられたイメージの同一性により支えられるという説。他者のイメージと自分のイメージは共有できないため、意味の客観性が説明できない。また、具体的なイメージからは概念的なイメージが抽出できない。更にイメージからは規則が読み取れない。

●意味の指示対象説:言葉の意味の同一性は言葉が指し示す対象により保証されるという説。抽象的概念を説明しようとするとプラトニズムを持ち出さないといけない。偽の文は何を示すのかという問題がある。

●確定記述句:単一の事物を指す表現は固有名・代名詞・確定記述句がある。これは定冠詞によって記述される句であり、日本語にすれば「あの唯一の」を付けた句。

●ラッセルの記述理論:確定記述句には対象が存在しないことがある(ex現在の日本大統領)。そのようような句はある特定の一人について語ったものではなく、いくつかの文に分解できる。
 「現在の日本大統領は女性である」→「現在の日本の大統領であるものが少なくとも一つある」かつ「現在の日本の大統領であるものは多くても一つである」かつ「現在の日本の大統領であるものすべては女性である」
 また、固有名も省略した確定記述句と見なし、同じような作業で消すことができる。

●ペガサスる:固有名『ペガサス』を述語化するためにクワインが導入した述語。ペガサスであることを分解不可能に示す。「ペガサスは存在しない」という文は、「あらゆるものについて、ペガサスるものは存在しない」と翻訳でき、有意味であることが分かる。全ての存在から述語により検索しているような感じ(実際には、検索できるものが存在である)

●文脈原理:命題に含まれる語の意味は命題の真偽にどう貢献するかによって決まるという原理(フレーゲ)。語単独が意味を持っているのではなく、命題の真偽が決まってはじめて語の意味が決まる。

●「世界は事実の総体であり、ものの総体ではない」:『論理哲学論考』の第一文、「事実」とは真なる命題のことであり、「もの」とは命題の要素のこと。世界は命題と同じ形式で存在しており、命題を語に分解するのと同じように事実をものに分解できる。

●要素命題:分解不可能まで分解された原子的命題、これを論理語によってつなぐことで命題が完成する。

論理実証主義:要素命題は直接的経験に対応し、それを論理語により結びつけた命題のみが有意味であるという考え方。

●意味の検証理論:論理実証主義者が主張する意味の理論。命題の意味とはそれがどんな経験により検証されるかによる。

論理実証主義の問題:全称命題は経験により検証できない。理論語を観察語に翻訳するのは難しい。傾向性を扱うことができない。

デュエムクワインテーゼ:(論理実証主義の主張のように)実験・観察で検証されるのは単独の命題ではなく、多数の命題の集まりである。

全体論ホーリズム):多数の命題がネットワークをなしており、ある経験による命題の変更は一つの命題ではなくネットワーク全体の再調整をもたらす。

●分析的真理と総合的真理の区別:論理実証主義者は観察に基づかない分析的真理と観察に基づく総合的真理が区分されるとしたが、全体論でははっきりした区分はない(再調整されやすいかされにくいかの程度差にすぎない)

●意味の使用説:言葉の意味は言葉の使用にほかならない。言葉そのものには意味はない、言葉を駒にしてある種のゲームが行われているが、その実践が意味となっている(実践の根拠や規則はなにかということを遡ることはできない)。一種の即興ごっこ遊びがそのまま意味・規則となる。我々にできるのは言語ゲームの根拠を探すことではなく、ただ言語ゲームを記述することのみである。

●可能世界意味論:様相的概念(偶然性・必然性)まで述語論理学を広めようとする試み。我々の世界とは違うが論理的に破綻のない可能世界を考える。すべての可能世界で成り立てば必然であり、ある可能世界で成り立てば偶然である。クリプキによれば可能世界は実在しないが、ルイスによれば実在する。

●固定指示詞:全ての可能世界で同一のものを指す名前、クリプキは固有名を固定指示詞だとした。一方、記述句は可能世界を貫いて同じものを指すことはできない(「アリストテレス」は全ての可能世界のアリストテレスを指すが、「プラトンの弟子」はそうではない)

●同一性の必然性:クリプキの考えでは、固定指示詞Aと固定指示詞Bが同一であることがわかれば、その同一性は必然的であることがわかる(すべての可能世界で成り立つ)。「水はH2Oである」は必然的真理である。

●指示の因果説:固有名は最初の命名儀式により個物と結びつき、それが因果的に継承される。クリプキのアイディア

本質主義:本質とは、ある事物がそれが存在する全ての可能世界で持っている性質だが、自然科学的活動はその本質を探し出すものである。

●自然種:一般名のうち固定指示詞の機能を持つもの。「金」「水」などの物質名、「牛」「虎」などの生物種名など。

参考文献
山拓央『分析哲学講義』