水槽脳の栓を抜け

SF作家 草野原々のブログ

理由の哲学 メモ②

参考文献

ci.nii.ac.jp

知覚に関する三つの立場:センスデータ説、志向説、選言説

センスデータ説:知覚において主体が気づいているのは、実在物ではなくセンスデータである。
幻覚論法:センスデータ説を支持する論法。実在物はないのに主体にとってあるものが存在している見えることがある。主体が気づいている何かが存在するならば、それは実在物ではなくセンスデータである。もし知覚と幻覚が同じ心的状態であれば、知覚においても主体が気づいている何かはセンスデータである。

志向説:主体にとってあるものが存在するように見えるというところから、あるものが存在するということは導出できない。知覚と幻覚はそれぞれ現実を志向するものという面で同一だが、前者の志向内容は現実に一致し、後者は一致していない。

選言説:知覚と幻覚は全く異なった種類の心的状態である。知覚は部分的に実在物に構成されているが、幻覚はそうではない。

 

行為の理由に関する三つの立場

心理主義:行為の理由は心的状態であるという立場。センスデータ説と同じ形式の論法で正当化される(行為を説明する理由は成立している何かであり、行為者の信念が偽のときも行為の理由がある、両者の理由が同種だとすると、両者に共通する理由としては心的状態以外にはない)

心理主義:行為を説明するのは目的や事実であり、行為者の心的状態ではないという立場。
ダンシーによる反心理主義の擁護:行為の理由説明文は事実でなくともよい。行為者の信念が偽の場合でも非実在的な信念の対象が理由となる。
規範制約:「行為を説明する理由は、その行為を正当化しうるものでなくてはならない」というテーゼ。反心理主義の核心。心的状態を理由とすることはこのテーゼを満たさない。
目的・事態・事実:反心理主義において行為の理由の候補。志向説と被せて考えるならば、行為の理由は行為者が志向した先にあるもの=目的となる。

選言説:行為の理由は行為者の信念が真であるか偽であるかに応じて変化する。信念が真のときはその対象が理由となるが、偽のときは心的状態が理由となる。
選言説の問題点①:行為者の信念が偽の場合、規範制約に違反する。
選言説の問題点②:行為の理由は信念の真偽に依存しないという原理(共通項原理)に違反する。